元国産旧車屋でメカニックとして働いていた筆者が、そこで行われていた裏話の暴露と、旧車を購入&メンテナンスするコツを紹介します。今は個人で細々と車やバイクの販売整備やカスタムを片田舎で、農業と兼業しています。
プライバシーの関係上、固有名詞などは避けさしていただきますのでご想像願います。
もくじ
オーバーホールに定義はない
まずレストア車の購入にあたって謳い文句となっていることの多い、オーバーホール済み(O/H済み)という言葉。この言葉の危険性は”定義がない”ということです。もともとオーバーホールとは、分解し、使えるパーツはそのままに、手直しが必要なパーツを交換や修理を行うことを指していると解釈しています。
例えばクラッチの残量がサービスマニュアルの範囲であればそのままに、残量が範囲を越えて消耗していれば交換する、といったのがオーバーホールのあるべき姿で、範囲内であっても残量が規定値に迫っていたら交換します。しかし、私が勤めていた旧車バイクショップでは「走行に支障がなく、見た目にキレイであればオーバーホール済みにする」と、わけのわからん習慣がありました。
クランクケースを開けていなければ、もちろん内部の状態を見てもいません。金ブラシやナイロンブラシと洗剤でゴシゴシ洗って見た目にキレイな個体はミッションオーバーホール済みと、エンジンのヘッドガスケットがキレイであればエンジンオーバーホール済みと偽り、ちょっと高い値段で販売。そのような車体はオーバーホール済み表記のないものよりも割高ではありますが、飛ぶように売れました。
キャブレターも見た目にキレイであればオーバーホール済みと。ハッキリ言ってそのショップでは洗車すればオーバーホールで、外装やフレームを塗装していればレストアの名を冠していました。
基本的な整備すらしていないので、当然のごとく、納車後のクレームも飛ぶように連発しましたが「旧車だから仕方ありません。そんなことを気にするアタナは旧車に乗る資格はありません」と突っぱねる日々。もちろんクレーム処理は一番下っ端のこの私でした。
実際に行った行為
・見た目にキレイなバイクはレストア済みと偽った
前述のとおり、再塗装済みの車体はレストア済み。フレームのみ塗装の場合はセミレストア車として。自社で塗装した車両よりも、仕入れた段階で塗装済みの車両の方が多かったです。おそらく前オーナー本人による塗装だとか、カスタムショップが塗装したのだと思われます。
もちろん、塗装されてからしばらく経っているためちょっと使用感がありましたが、それについてはクレームがきたことがありませんでした。
・レストアや国産旧車のノウハウが売りだったが
ノウハウがあることが売りだが、ちゃんとしたOHやレストアなんてやったことがないと言っても過言ではありません。私個人的にはレストアや旧車イジりは大好きだし、得意だと自負しています。もともとその経験が活かせるし、もっと経験値を上げる目的で入社したのに、この有様…。
先輩によると、詐欺に巻き込まれていることが原因で、メカニックの入れ替わりが激しいとか。しかし給料だけはよかった。この業界で35万円っていえば同業者さんなら羨ましいでしょ?
・整備は基本お断りだが…
このやばいレストアショップの主な収入源はレストア旧車の販売業務。表向きは整備やカスタムも売りにしていました。私はもちろん、もう数人のメカニックも旧車イジりは得意分野です。しかし整備やカスタムに関してはそこの社長はあまり受けたくない印象。
整備やカスタムもやるにはやるが、明らかに工賃を高く見積もる。どうやら社長の狙いは旧車車体だったようで、なんとか整備ではなく、そのバイクを手放すように仕向けて車体を売却させるように仕向けていました。うまく手放されたバイクは安く買い叩かれ、のちにオーバーホール済みだとかレストア済みと冠して高価で販売されるオチ。
もちろん明らかに高い整備費用でも作業を依頼するオーナーさんは数多くいましたが、安物部品を使わされ、作業時間も迫られました。社長から口酸っぱく「早くしろ、見た目に丁寧だったら良いんだよ。見えないところは手を抜け。チンタラすんなオラ」と。
お陰でここのショップの腕はクソだと、私の悪口がネットに晒されていました 😥
・メーター巻き戻しは当たり前
もう250cc以下のバイクでは絶対条件としてメーター巻き戻しをさせられていました。その作業に関しては、社長自身が行っていたのですが、すでにメーター巻き戻しされているであろう違和感バリバリの走行距離の少ないバイクに対しても、戻さないと気が済まないのかってくらい戻していました。
あとは国産旧車のたとえばCBX400Fのスピードメーターは巻き戻し用として何個もストックされ、いつでも好きな数字に設定できるようにバラバラ状態で出番を待っている始末。メーター巻き戻しは社長の特技であり生き甲斐だったのかもしれません。
・個人を装って旧車を委託販売していた
とにかく少しでも多くの旧車バイクを販売して、お店の経済を回したかった社長。お店に入らないくらいある在庫車は、倉庫代わり安い賃貸の平屋に居間(もちろん畳)にストックされ、どうせヤフオクだからってことでお店ではちょっと捌けなさそうな哀愁ある車体を主に販売していました。
で、密かにそのアカウントを監視していましたが「知人の委託販売です」から始まる、絶好調でキャブレターオーバーホール済みがデフォルトの、どうせ走行距離巻き戻しであろう旧車たちは、罪のない人々の手に渡り、悪い出品者として評価されていました。
で、あとで知ったんですが、どうやらヤれた車体の写真をプロの加工屋さんに依頼し、ピカピカな車体に画像を加工して出品していたそうです。現在そのアカウントは削除されていました笑 悪い評価だらけですしね。
・納車整備がクソすぎ
売れたバイクはもれなくリッター250円のエンジンオイルに交換していました。どこのメーターかと申しますと、韓国から輸入された謎オイルです(ハングルで書かれていたので読めませんでした)。それ自体に問題はなさそうでしたが、お店では旧車に適した当店オリジナルのエンジンオイルとして、カッコイイラベルが貼られ、リッター3,500円で販売。念のため点火プラグも新品に交換。
ブレーキフルードも謎メーカーのDOT4に、リザーバータンクから見える部分だけ交換します。タイヤだけ展示するときに、ちょっと減っていたらちゃんと新品タイヤに交換していましたが、チューブタイプの場合、どれだけ古くてもチューブだけは使いまわしていました。
ブレーキパッドはまったくない場合以外はそのまま納車。もうこれって交換するよねって状態でもそのまま納車命令が。社長の言い分としては「旧車なんか通勤に使わないんだから大丈夫だって」と。わけがわからん。
で、もっともクソ整備だったことが。展示の段階ではキレイなオーリンズのリアサスペンションが装着されていました。しかし、売れた瞬間に在庫の古いボロい抜けたオーリンズサスペンションへの交換命令が。これ、お客さんが望んだことではなくて、社長の常套手段でした。
・謎の外国人 サカモト
このサカモトという外国人は怪しさ指数500パーセント! どう見ても日本人ではなく、ミャンマーとはタイとかその辺の外国人。年齢は40代前半で背は低く、痩せ型で色黒。喋り方は片言の日本語で、いつも車検の切れたボロボロの軽トラックに乗っている。タイヤは別の車種のやつが着いてるから車高が高い上にすり減ってることが遠目でわかる。
こいつはときどきバイクのパーツを荷台に積んで持ってくる。ときどき社長が書類付きであろうバイクのフレームをヤフオクやらで入手したら、サカモトが軽トラで取りに来て、それからしばらくしたら塗装済みのバイクを運んでくる。そのショップで唯一、全塗装する案件であろう。
おそらくこのサカモトってやつは盗賊だと思うし、社長はその依頼人だと思うし。とにかく知らぬが仏でした。
購入時するときはこうしよう
ここまで悲惨なバイク屋ってなかなか珍しいにしても、中古品の売買ってトラブルがつきもの。だから安心して購入するためにいくつかアドバイスをしておきます。
購入するときはボイスレコーダーで録音しておこう
まぁよくあるのが言った言わないトラブル。お客さんが納車時に「ここをこういう風にしておいてください」といえば、販売員は「あー、それくらいなら無料でやりますよ!」と意気込んで、納車時に追加請求されるとか、そんなことでトラブルはあります。
今、自分でバイク屋をやるようになった私はお客さんに許可を取って会話の内容を録音させていただいています。こうすれば言った言わないトラブルは防げます。悪気がなくたって勘違いすることもありますからね。
悪質なショップなら口先だけで良いこと言っといて、支払いのときに話を変えてお金を巻き上げるなんてこともありますから、密かにボイスレコーダーしておいたら良いですよ。今ではスマホのアプリで録音できますから。
売買契約書は事細かく表記する
これさっきのボイスレコーダーの延長的な話になりますが、そもそも旧車の購入時に保証が付くことなんてあまりないと思います。しかし中には1年保証しますとかウリ文句にし、その安心から購入に至る方もいるでしょう。で、保証期間中に故障したから販売店に無償修理をお願いしたら、打って変わって有料修理だったとか。
のちのち話してみると今回の故障には保証が適用されないとかってオチはけっこうあります。でも購入時の話ではこの故障に対して保証が受けられるみたいなこと言ってたような…ってならないように、売買契約書にはこと細かく保証内容を記入してもらいましょう。
例えば、一年間または走行距離5,000Km以内保証(ただし、エンジンまたはミッションの故障に限る と言った具合。ご自身のためにも手書きでも良いので一筆いただいておきましょう。私はなるべく細かく書いて、その内容に納得していただいてから売買契約を交わしています。
レストア・オーバーホールの内容を詳細に尋ねる
レストア旧車を購入するときは絶対に聞いておきましょう。そしてボイスレコーダーの電源はオンにしておきましょう。「エンジンオーバーホール」と表記してあったら
・エンジンの何をどうしたのか
・誰がいつやったのか
・内燃機屋に出したのならばそのデータ表も見せてもらう
で、できればなぜオーバーホールしたのかを説明してもらいましょう。「オーバーホールした方が売れやすいからです」ってのも理由の一つになりますし、正直でいいですよね。私もちゃんと嘘偽りなく言います。過去が過去だけに 👿
ここであいまいな回答をされた場合、2つの理由が考えられます。
・店員がいまいちわかっていない…販売専門の販売員だったらメカ的な知識がない人もいますし、販売だけに集中しているので、せいぜいわかるのは入庫日くらい。あとは適当に「これ調子いいですよ」とか「キレイでしょ」ってな薄っぺらな情報くらい。まぁこれタイプの店員に罪はないでしょう。気に入らなければ別の人に聞いてみては。
・ぶっちゃけなんにもしていない…私が過去に勤めていたクソショップと同じことをやっているかもしれません。私の友人も私と同じようなショップで働いていましたから。”客がどうであれとりあえず金儲けできりゃいんじゃね”的なお店かも。
とはいえ変な店ばかりじゃないからお気に入りのショップが見つかればヨシだよね
バイク屋とか自動車屋とか、正直いい加減でクソ野郎がやっている会社は多いです。とはいえ極稀にちゃんとやってるショップもあります。なんでクソショップが多いかと言うと、手を抜けば抜くほど儲かる世界だからかと。
とにもかくにも、ご自身が納得のいくお店が見つかればバイクライフも楽しくなると思います。たとえば店員さんと気が合うとか、ショップの方針が自分にマッチするとか、もうなんでも良いです。一番ダメなのは、お金を払っても疑うこと。そんなことじゃ誰も楽しくありません。
よくいるじゃないですか、○○のお店でタイヤ交換○○円って高いですか? とか聞くバカ。もうね、金払ったら疑うな。疑うなら金を払うな。
納得いって、お金払いたいお店を見つけましょう。どこでなにをするにしても!
旧車購入の心得
旧車ってほんと大変なの! 自分でイジってても感じます。これから買う人も、すでに乗ってる人も、とりあえず心得に目を通して指差呼称しよう!
・故障しても文句を言わないヨシ!
いやでも壊れるのは事実。次から次へとまぁ…。ネジとか導線とかキックペダルとか、どれも賞味期限が切れまくってるものを使ってるわけです。あーレストアめんどくせぇって言う人は現行車を買おう。たとえレストアしたって新車以下のクオリティなのです。悲しいかな^^;
・乗れない時期が長くてもワクワク待つヨシ!
パーツの供給不足から整備が進まないことも。DIYの人もタンクを外して何日も愛車を放置してしまってたりしますよね。たとえそうでなくても旧車は時間がかかる作業が多い。電装系のトラブルなんかだとハーネスの導通を調べたり、ジェネレーターだとかCDIだとか、細かく地道な作業ばかり。
あとはショップの都合もあるから大掛かりな作業は後回しにされがちだったりします。お客さんによっては「いつ作業しますか」「パーツはいつ入ってきますか」「いつ仕上がりますか」みたいな電話が頻繁にかかってきたり。パーツがいつか入るかってのはメーカーの問題だからメカニックにはわかりません。だからいつ作業に入るかもわかりません。
いつ仕上がるかについては、旧車の場合、ナンセンスな質問といってもいいでしょう。新しめなバイクだったら故障の原因もわかりますが、旧車の場合、思わぬ事情から故障につながっているこもありますし、原因て一つに絞りにくいこともありますから、かんたんに作業延長しちゃいます 😐
・メンテナンス費用をケチるなヨシ!
希少性の高いパーツが多い旧車は、必要経費が高くなる。ケチるとバイクはますますトラブリーになる。特に電気系統は、価格の安い中古品は使わず、新品を使いましょう。中古品って賞味期限が切れてますからね。あと、メンテナンも趣味にしてください。そうすれば旧車もっと楽しめるはず!
・とにかく信頼できるショップを探すことヨシ!
前述しましたが、店員さんと気が合うなど、どんな理由でも信頼できるショップを見つけましょう。ネットでの評判が悪くてもご自身が納得すればいいのです。どんなにまともなショップでもネットでは悪評だったりと、現実と差があることもあります。自分の気持ち重視で、素直に信頼できるショップが見つかればバイクライフはもっと楽しくなると思いますよ!
世の中悪いヤツはそのへんにいる
こっち系の記事って「とはいえそんな悪いことする人はごく一部ですから安心してください」って締めていますが、旧車とかチューニング系のショップって詐欺系多いのは事実です。統計取ってないんでなんとも言えませんが、私の知る限り、詐欺だったり詐欺まがいショップはかなり多い。
デモカーはしっかり、客車は手抜きこれも当たり前の世界。ドレスアップカスタムショップは自社製カスタムカーは常識ですが、チューニング系ショップって実は他社に外注してデモカー作ってることがあります。これは結局なにが言いたいかって…ね?
コメントを残す